食品ロス シリーズ(8)フードバンクによるメリット(社会的課題の解決)とは

 フードバンクによる社会的課題の解決は、複数ある。
1、食品ロス削減   2HJの場合、2002年から2013年で10,141トン。
2、食に困っている人の救済 2HJの場合、前述の期間で37万1645名に食べ物を渡している。
3、経済効果 2HJで前述の期間の場合、58億132万円の支出を抑制することができた。
4、環境への負荷の軽減 2HJでの前述の期間の場合、CO2の排出を3935トン抑制することができた。

広島県広島市内でフードバンク活動ほか様々な活動をおこなう「あいあいねっと」は、広島市内の築百年以上の民家を改築し、助成金により厨房を設置、カット野菜の企業や農家から引き取る余剰食品を活用したレストランを運営している。この収益金を、フードバンク活動に活用している。ここで創出されるメリットは、食品ロス削減に留まらず、地域の活性化やコミュニティづくり、地域の人、特に多く集まってくる高齢者の栄養改善にも繋がっている。このように、フードバンク活動がもたらすメリットは食品ロス削減だけでなく、複数挙げることができる。

バイオマスの5Fという考え方では、付加価値の高い利用方法がより優先されるべき、として、食料(Food)、繊維(Fiber)、飼料(Feed)、肥料(Fertilizer)、バイオ燃料(Fuel)の順で使っていくべきとされている。食品の形で活用するフードバンクは、この「バイオマスの5F」から鑑みて望ましいと考えられる。

食品ロス シリーズ(7)日本初のフードバンク団体、セカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)

前述のセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)は、2000年に日本で初めて活動を始めたフードバンク団体である。2002年にNPO法人化し、現在、10数名の職員で次の4つの活動をおこなっている。
1、施設や団体に食品を提供するフードバンク
2、個人に食品を提供するパントリー
3、炊き出しをおこなうスープキッチン
4、政策提言
 (2014年10月時点)

2014年11月時点で560以上の事業者と合意書を締結した実績があり、年間およそ320以上の施設に食品を運んでいる。施設の中で最も多い割合が児童養護施設で、全体のおよそ3割を占める。2002年から2013年までに2HJが運んだ食品の合計は10,141トン。金額換算すると、およそ47億8725万円。これを、もし事業者が廃棄していたと仮定するとかかる廃棄コストは10億1406万円。先ほどの食品の金額換算と廃棄コストを合算すると、58億132万円となる。

食品ロス シリーズ(6)米国で1967年に始まったフードバンク活動

フードバンク活動は、1967年、米国で始まった。米国・シカゴにあるGFN( Global Food Bank Network)の公式サイトによれば、2014年現在、フードバンク活動は世界36カ国以上に拡がっている。
 日本では、2000年にセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)が始めた。日本全国では、北海道から沖縄まで、40数カ所のフードバンク団体がある。詳しくは、農林水産省のホームページや消費者庁のホームページ、埼玉県庁のホームページなどに、各フードバンク団体の説明やリンクが掲載されている。

 2HJがおこなっているフードバンクの流れとしては、次のような形である。

1、まず、食品を預けたいという事業者と、フードバンク団体とが、合意書(契約書)を締結する。なぜなら、事業者が第三者に食品を預けるとなると、転売されるリスクや賞味期限内に使用しない可能性、食品事故の可能性など、懸念される事項が複数ある。そこで、これらについての取り決めを、口頭ではなく、文書の形で約束しあう。
2、合意書が締結されてから、食品を受け取る。
3、受け取った食品を、使用者に渡す。車輛を使ってフードバンク団体が福祉施設に運ぶ場合、施設がフードバンク団体まで取りに来る場合、あるいは食品の量が多い場合、食品企業の持つ物流ルートや契約している運送企業を活用して直接、食品を受け取る複数の箇所まで運ぶ場合など、ケースバイケースである。したがって、運送コストについては、食品を預ける事業者側で負担する場合と、フードバンク団体あるいは施設側で負担する場合とがある。
4、受け取った施設あるいは個人が食事に活用する。

食品ロス シリーズ(5)二つの社会的課題:食品ロスと貧困

このように、一方では食品ロス、他方では食の貧困という、二つの社会的課題が存在している。所轄官庁としては、食品ロスは現在、農林水産省・消費者庁・環境省・内閣府・文部科学省・経済産業省の6省庁が連携しており、貧困(福祉)は厚生労働省が担当している。これら二つの社会的課題は、どうしても分断されざるを得ない。かつてオリンピック誘致活動の折「おもてなし」という言葉が流行ったが、似たような言葉に「おすそわけ」がある。食べきれない頂き物などを、近所や知人に分けることを指す。同様に、一方に食べられるけれど余っている食べ物があり、他方に食べ物に困っている人がいるならば、それを繋いで渡せばよいのではないか。その考え方にのっとった活動が「フードバンク活動」である。

食品ロス シリーズ(4)貧困線以下で暮らす人が2000万人いる“先進国”日本

まだ食べられるにも関わらず捨ててしまう食べ物が500〜800万トンあることはわかった。では、食べ物に困っている生活困窮者は、日本にどれくらい存在するのだろう。厚生労働省が発表した「2013年 国民生活基礎調査の概要」の相対的貧困率16.1%を基に、日本の総人口に乗じて換算すると、貧困線以下で暮らす人は単純計算でおよそ2000万人いることになる。貧困瀬とは、簡単に言えば、日本人の平均年収の半分のところを指す。金額で言うとおよそ年収122万円。1ヶ月あたりに換算すると、10万円になる。たとえば首都圏で、家賃を払い、光熱費や食費、衣類、日用品などを払っていくとなると、厳しい金額である。しかし、それ以下で暮らす人が2000万人、単純計算の割合にして日本人のおよそ6人に1人となる。かなり多い割合ではないだろうか。NHKで食品ロス問題を特集して頂いたとき、視聴者からの意見(Twitter)で「日本は先進国だから、食べ物に困っている人などいるわけがない」という趣旨のものがあった。貧困というのは、必ずしも目に見えるところだけにあるものではない。社会学的にはhidden populationと呼ばれるように、見えない人口がある。ホームレスの場合、最近増えてきている若年層のホームレスは、路上ではなく、ネットカフェや友人宅などに潜んでいると、ホームレス支援の方に聞いた。そこに入ってしまえば、一般の人の目に触れることはなくなる。厚生労働省のホームレス調査では、全国で4桁(9,500人強)のホームレスがいる、ということになっている。ほかにもひとり親世帯、高齢者、在日外国人など、ホームレス以外にも食べ物に困窮している層が存在する。