食品ロス シリーズ(13)生活者の立場で食品ロス削減に向けてできる10か条

1、賞味期限は美味しさの目安なので、自分の五感も使って判断する
2、無理のない範囲で残さずに食べる
3、普段から冷蔵庫や戸棚の食料の量を確認しておき、買いすぎないように
4、飲食店などで注文しすぎない。食べられる量を出してくれる店を選ぶ
5、自宅で作った、食べきれなかった料理は別の料理に変身させて食べる
6、買い物時、すぐ食べる食品であれば賞味期限の迫っている手前から取る
7、災害に備えた備蓄食品は、防災の日に食べる、フードバンク団体へ寄贈
 する、ローリングストック法で保管し、少しずつ使っては買い足していく
8、買いだめし過ぎない、調理しすぎない
9、食べ物に対する感謝の気持ちを持つ
10、地域や学校、職場、自治体などでフードドライブ(食品持ち寄り運動)
 を実施し、家庭で余っている在庫を捨てることなく活用し、無駄を無くす

フードドライブは、沖縄県では市役所の職員もおこなっていると聞いていたが、東京でも2014年5月に世田谷区が実施、同年10月には文京区、調布市、環境省などが実施している。また島根県の社会福祉協議会では2013年12月に続き、2014年にもフードドライブを実施している。

食品ロス シリーズ(12)食品ロス削減に向けて、食品業界と取り巻く立場でできること

1、備蓄食品   入れ替え時に捨てるのではなく、職員に配布する、フードバンク団体に寄贈するなどの方法がある。
2、農産物   規格を緩和する、あるいは生産調整の際、潰すことで補償金が出る仕組みを一考したい。
3、製造分野  新製品を次から次へと出していくことは、ロス率も高まるので、安易な新製品発売は再考が望まれる。
4、流通業界  3分の1ルールに関しては、2012年から継続しているワーキングチームを通しての再検討。販売期限の見直し、欠品ペナルティの見直しなど。
5、外食産業   食べきりサイズや持ち帰りの許可など。ホテル業界で初めて、横浜国際ホテルが2009年に、ドギーバッグサービスを始めている。横浜の中華街では、一個から注文できる仕組みや、顧客が食べ切ってから次の注文を受ける飲食店などもある。
6、自治体(都道府県、市区町村)  「食べきり運動」や、宴会の最初や最後でちゃんと食べ切る運動、食べきりサイズを出す飲食店にロゴマークをつけるなど、様々な活動が始まっている。
7、仏閣   全国にコンビニエンスストアは5万ほどあるが、お寺は75,000以上ある。このお寺のうち、滋賀県の浄土宗のお寺400以上が、東日本大震災の後、お米を7トン集めて被災地に寄付をしている。東京都内のお寺も米や味噌などの食料をフードバンク団体に寄贈している。

このように、それぞれの立場でできることをしていきたい。

食品ロス シリーズ(11)世界の動向

FAO(国際連合食糧農業機関)が2011年および2013年に発表したレポートによると、世界の生産量の3分の1に当たる13億トンの食料が、毎年、廃棄されている。一方、WHOによれば、一日US$1.25以下で暮らしている人が世界に12億人存在している。日本の中だけでなく、世界でも食品ロスと貧困という「食の不均衡」が発生している。たとえばヨーロッパでは2014年を「反食品ロス年」と名付ける、食品ロス削減の数値目標を立てる、など、食品ロス削減に向けた活動が進んできている。
 世界で初めてフードバンク活動を始めた米国では、フードバンクに寄付すると税金が安くなる税制上の優遇措置がある。企業は課税所得の10%、現物寄付の場合は原価の2倍を上限に税金控除が可能である。また、万が一、食品を寄贈したことで、意図しない不慮の食品事故が起こったとしても、寄付は善意でおこなったことなので責任を問わない「善きサマリア人の法」という免責制度もあり、食品事業者が寄付しやすい土壌がある。また、困窮者は野菜が不足しがちだが、余剰農産物を困窮者に活用する法律などがあり、国が余剰農産物を買い取り、困窮者に活用できる仕組みもある。1992年から毎年5月の土曜日におこなっているStamp Out Hunger(貧困撲滅)という取り組みは、自宅で余っている食品を、年一回、5月の指定された土曜日に、自宅の郵便受けのところに置いておけば、郵便配達の人が回収してまわり、それを困窮者に活用するという、国ぐるみのフードドライブ(食品持ち寄り運動)がおこなわれている。2014年5月には、郵便配達員30万人がこれに参加した。
 中国では、出された食事を全て食べ尽くすのは「足りないからもっとよこせ」という意味にもなり、食べ残す習慣があると言う。数値は諸説あるが、2013年1月に日本で報道されたには、年間5000万トンの宴会食べ残し料理が廃棄されており、穀物生産量の8%、野菜生産量の20%に相当するという。そこで農業省の農産品加工局長が「驚くべき量。食料節約は国家戦略上、極めて重要であり、政府は節約を指示すべき」と発言し、市民や著名人もこれに賛同し、中国光盤運動(食べ残し撲滅運動)が始まっている。
 台湾や韓国は、分かち合いの文化が浸透している。生活困窮者が、一般の市価より安く食品を手に入れることができる「フードマーケット」が存在している。また韓国では、家庭で余っている食品を、スーパーマーケットで買い物の際に投入できるボックスが設置されているスーパーもある。韓国では生ゴミを埋めていたため、1990年代にフードバンクに関する議論が起こり、1995年には環境部・保健福祉部などで生ゴミ管理協議会が設置された。1997年にソウル市食品寄付センター設置提案が出され、1998年いはフードバンクモデル事業を4カ所で実施。2000年に韓国社会福祉協議会を、全国フードバンクを統括する最上位組織に認定、2009年には全国フードバンク設置が306カ所、2009年には寄付食品中央物流センターが開設、2013年には425以上のフードバンク団体がある。国策としてフードバンクを進めるやり方には、このように浸透が早いというメリットもあれば、手続きが遅い、市民が当事者意識を持ちづらくなるなどのデメリットもあり、日本のような市民運動と単純に比較することはできず、拙速には判断しづらい。
 トルコにも、生活困窮者が無償で入手できるソーシャルマーケットがある。これは食料支援が必要な家庭のみ使用可能の店である。ポイントカードのようなものが支給され、ポイントの上限内で欲しい食品を手に入れることができる。イタリアでは買い物客にスーパーの入口でチラシが配られ、たとえば「ツナ缶5つ」と書かれていたら、買い物客はそれを購入し、出口のボックスに投入すると、それが困窮者に活用される。ほかのヨーロッパの国にも、トルコのソーシャルマーケットと同様のマーケットが存在している。ドイツでは、小売店からの食品廃棄が日本の5分の1(約31万トン)に過ぎないが、前述の通り、「捨てるには良過ぎる」という国家的プログラムを2012年に実施している。
 ヨーロッパでは、1984年にフランスでフードバンクが設置、1986年にヨーロッパフードバンク連盟ができ、1993年にはドイツでフードバンクが始まった。フランスに最も多く、79団体以上ある。

食品ロス シリーズ(10)食品ロス削減における日本の動向

日本では、3R政策といって、Reduce(廃棄物の発生抑制) Reuse(再使用) Recycle(再資源化)の順番に対策に取組む考え方がある。農林水産省は食品産業に対し、発生抑制の目標数値を設定し、2012年4月に試行、2014年4月からは本格始動している。また農林水産省は、2013年下旬より、NO-FOODLOSS プロジェクトと名付けた食品ロス削減国民運動を展開し始めており、「ろすのん」
というキャラクターを活用した取り組みが少しずつ増えてきている。

 2005年7月15日に施行された食育基本法の第一章第三条では、食に関する感謝の念と理解を醸成することが目標に掲げられている。
2012年7月に、食品ロス削減を目標として農林水産省・消費者庁・環境省・内閣府(食育担当)の4省庁が連携した。2013年2月にはここに文部科学省が加わり、8月には経済産業省が加わって6省庁連携となった。また食品業界では、農林水産省の補助事業として、食品ロス削減のための商習慣検討ワーキングチームが2012年10月3日に発足し、2013年度、2014年度と3年連続で会合を開催し、具体的な食品ロス削減対策に挑戦している。これまでのワーキングチームによる動きとして、次のようなものが挙げられる。

1、菓子・飲料パイロットプロジェクト 特にロスの出やすい飲料と菓子に関し、納入期限を3分の1から2分の1に延長する、という実験を、希望する35企業が2013年8月から2014年2月までおこなった。その結果、飲料・菓子全体で納入期限を延ばしたとすると、およそ4万トンが削減できるという試算になり、金額換算でおよそ87億円が削減できる計算になった。

2、賞味期限の見直し 日清食品と明星食品が、2014年4月1日よりカップ麺の賞味期限を1ヶ月延ばし「6ヶ月」へ、袋麺については2ヶ月長い「8ヶ月」へと変更した。これは、約60社加盟している日本即席食品工業会が1年かけて包装技術の進歩を検証し、賞味期限1−2ヶ月延長できる、と結論づけたことを受けての動きである。食品ロス削減とともに防災備蓄食としての役割が高まることが期待されている。

3、年月日表示を年月表示へ   現在、法律上では、賞味期限が3ヶ月以上ある食品に関しては、賞味期限の日付まで表示する必要は無い、とされている。だが実際、日付まで表示しているケースが多い。これは食品メーカーにとってはリスク管理とトレーサビリティのためでもある。ただ、日付管理は関係者だけがわかればよく、数字である必要はないともいえる。2013年5月製造分から、ミネラルウォーター(2リットルサイズ)は、大手5社が年月表示に切り替えた。また2014年6月製造分から、清涼飲料水のうち、賞味期限1年以上ある食品に関しては、年月表示に切り替えている。これにより、1日単位の厳格な保管や補充、移送などを中止し、運送作業を減らすことによりCO2の削減にも繋がる可能性がある。大手飲料企業団体「サステナビリティプロジェクト委員会」によれば、運送費削減により、業界全体では年間2000から3000トンのCO2削減になるという。

4、消費期限と賞味期限の違いを理解する  ドイツでも同じ問題が起こっていたが、日持ちのしない惣菜や弁当などに表示される「消費期限」と、比較的品質が劣化しにくい食品に表示される「賞味期限」を混同している場合が多い。賞味期限は、きちんと保管されておれば、1日や2日過ぎても品質が劣化していない場合が多い。ドイツでは、このことを生活者に浸透させるため、「捨てるには良過ぎる」という国ぐるみのキャンペーンを2012年に実施している。日本では消費者庁が先頭に立って、この啓発活動を進めている。

食品ロス シリーズ(9) なぜ食品ロスが生じるのか

なぜ食品ロスが生じるのかについては、賞味期限接近をはじめとして、複数の要因がある。

主なものを挙げてみる。

1、包装上の不具合  缶詰の缶がへこんだ「へこ缶」、缶詰のラベルが破れたりはがれたりしたもの、段ボール箱の一部が少し破れたものなど。内容物である食品に異常がなくとも、これらは流通が受け取らないなど、商品として流通できなくなるケースが多い。

2、表示の不具合  印字を誤った場合、キャンペーンなどの期間が過ぎたものなど。

3、季節・数量限定や改訂品  ボトルなど容器デザインを変えたため、旧品が出回らなくなったもの。暑い時期に出回るそうめんのつゆやそうめんの乾麺は冬場になってくると在庫の回転速度が遅くなり、ロスになりやすく、逆に寒い時期に出回るおでんの素や鍋のつゆなどは、気温が上がってくると売れにくくなるためロスになりやすい。また季節商品も、売れ残ればロスになる割合が高い。1月の正月のおせちや切り餅、鏡餅、2月の節分の豆やバレンタインデーの菓子、3月のホワイトデー、10月のハロウィン、12月のクリスマスなど。欠品を起こさないようにするのである程度多目に準備すると、売れ残ればロスになり、割引で販売もしくは返品・廃棄となる。

4、定番カット  スーパーマーケットに比べると、コンビニエンスストアは限られた売り場面積で売上を上げる必要があるため、週にいくつ以上販売されなければ定番の棚から落とされる場合がある。コンビニ限定に製造された菓子や飲料などもあり、コンビニでの販売チャンスを失った製品は、行き場がなくなりロスとなる。

5、食品検査や団体調理  毎日、食品事業者がおこなっている品質検査では、全量を使わず、一部分を使う場合があり、残りは廃棄しているケースが多い。また調理師専門学校など、生徒数が数千人のところで野菜の剥き方を練習したあとの野菜は廃棄していると、ある調理師専門学校の職員の方に伺った。

6、農産物の規格外や大量生産  ある都道府県で大量生産されたキャベツや白菜など、「潰すと農家に補償金が出る」場合や、活用する場合は活用者がその農地まで行き、掘る作業をしなければならない場合がある。お金にならないことに対して、限られた人員とコストをかけられず、やむなく廃棄しているケースもある。

7、イベントや食の展示  マラソン大会やお祭りなどのイベントや、新製品発表会などの展示会では、天候や来場者数によって消費される食品の数が左右されるため、需要と供給のバランスをとるのが非常に難しい。足りなくなってしまう事態を防ぐため、見込みよりも多目に用意すると、余ってロスになってしまうこともある。
 毎年2月に開催されている東京マラソンでは初回、飲食物を少なくしたところ、足りなくなってしまったため、二回目以降は増やしたが、今度は余ってしまうことになった。そこで2009年より2HJと恊働し、ゴール地点である東京ビックサイトにトラックが待機し、余った飲食物(バナナ、トマト、みかん、その他)を受け取り、困窮者に活用している。

8、過剰購入など消費者側の事情 賞味期限が迫ってきて捨てる、過剰購入で廃棄するなど。

9、備蓄食品 阪神大震災や新潟中越沖地震、東日本大震災を経て、家庭でも事業者においても備蓄の必要性は意識されるようになったが、知らずに賞味期限が切れてしまい、廃棄せざるを得ない場合や、入れ替えのときに捨てることが前提の場合もある。

10、3分の1ルール  日本の商習慣である3分の1ルールにより、納入期限で1139億円のロス、販売期限で417億円のロス、合計で年間1500億円以上のロスが生まれている(流通経済研究所、2010年推計)。諸外国と比べ、日本の納入期限は短く、ロスが出やすい背景となっている(流通経済研究所および経済産業省による製配販連携協議会報告による)。たとえば米国では賞味期間の2分の1が納入期限、イタリア・フランス・ベルギーでは3分の2、イギリスでは4分の3と、日本よりも長い。

総括すると、小売は消費者が要求する「いつも店には沢山食品が並んでいて当たり前」を満たすため、また競合店に顧客を奪われないため、顧客満足をはかるため、製造業者に対しては「欠品したらペナルティ(粗利補償金)」を課している。製造業は、競合メーカーに取引先を奪われないため、また欠品ペナルティを防ぐため、多目に製造しないと・・という観念がある。食品業界の中には販売側が優位な地位に立つという図式が存在しているのではないだろうか。