食品ロス シリーズ(9) なぜ食品ロスが生じるのか

なぜ食品ロスが生じるのかについては、賞味期限接近をはじめとして、複数の要因がある。

主なものを挙げてみる。

1、包装上の不具合  缶詰の缶がへこんだ「へこ缶」、缶詰のラベルが破れたりはがれたりしたもの、段ボール箱の一部が少し破れたものなど。内容物である食品に異常がなくとも、これらは流通が受け取らないなど、商品として流通できなくなるケースが多い。

2、表示の不具合  印字を誤った場合、キャンペーンなどの期間が過ぎたものなど。

3、季節・数量限定や改訂品  ボトルなど容器デザインを変えたため、旧品が出回らなくなったもの。暑い時期に出回るそうめんのつゆやそうめんの乾麺は冬場になってくると在庫の回転速度が遅くなり、ロスになりやすく、逆に寒い時期に出回るおでんの素や鍋のつゆなどは、気温が上がってくると売れにくくなるためロスになりやすい。また季節商品も、売れ残ればロスになる割合が高い。1月の正月のおせちや切り餅、鏡餅、2月の節分の豆やバレンタインデーの菓子、3月のホワイトデー、10月のハロウィン、12月のクリスマスなど。欠品を起こさないようにするのである程度多目に準備すると、売れ残ればロスになり、割引で販売もしくは返品・廃棄となる。

4、定番カット  スーパーマーケットに比べると、コンビニエンスストアは限られた売り場面積で売上を上げる必要があるため、週にいくつ以上販売されなければ定番の棚から落とされる場合がある。コンビニ限定に製造された菓子や飲料などもあり、コンビニでの販売チャンスを失った製品は、行き場がなくなりロスとなる。

5、食品検査や団体調理  毎日、食品事業者がおこなっている品質検査では、全量を使わず、一部分を使う場合があり、残りは廃棄しているケースが多い。また調理師専門学校など、生徒数が数千人のところで野菜の剥き方を練習したあとの野菜は廃棄していると、ある調理師専門学校の職員の方に伺った。

6、農産物の規格外や大量生産  ある都道府県で大量生産されたキャベツや白菜など、「潰すと農家に補償金が出る」場合や、活用する場合は活用者がその農地まで行き、掘る作業をしなければならない場合がある。お金にならないことに対して、限られた人員とコストをかけられず、やむなく廃棄しているケースもある。

7、イベントや食の展示  マラソン大会やお祭りなどのイベントや、新製品発表会などの展示会では、天候や来場者数によって消費される食品の数が左右されるため、需要と供給のバランスをとるのが非常に難しい。足りなくなってしまう事態を防ぐため、見込みよりも多目に用意すると、余ってロスになってしまうこともある。
 毎年2月に開催されている東京マラソンでは初回、飲食物を少なくしたところ、足りなくなってしまったため、二回目以降は増やしたが、今度は余ってしまうことになった。そこで2009年より2HJと恊働し、ゴール地点である東京ビックサイトにトラックが待機し、余った飲食物(バナナ、トマト、みかん、その他)を受け取り、困窮者に活用している。

8、過剰購入など消費者側の事情 賞味期限が迫ってきて捨てる、過剰購入で廃棄するなど。

9、備蓄食品 阪神大震災や新潟中越沖地震、東日本大震災を経て、家庭でも事業者においても備蓄の必要性は意識されるようになったが、知らずに賞味期限が切れてしまい、廃棄せざるを得ない場合や、入れ替えのときに捨てることが前提の場合もある。

10、3分の1ルール  日本の商習慣である3分の1ルールにより、納入期限で1139億円のロス、販売期限で417億円のロス、合計で年間1500億円以上のロスが生まれている(流通経済研究所、2010年推計)。諸外国と比べ、日本の納入期限は短く、ロスが出やすい背景となっている(流通経済研究所および経済産業省による製配販連携協議会報告による)。たとえば米国では賞味期間の2分の1が納入期限、イタリア・フランス・ベルギーでは3分の2、イギリスでは4分の3と、日本よりも長い。

総括すると、小売は消費者が要求する「いつも店には沢山食品が並んでいて当たり前」を満たすため、また競合店に顧客を奪われないため、顧客満足をはかるため、製造業者に対しては「欠品したらペナルティ(粗利補償金)」を課している。製造業は、競合メーカーに取引先を奪われないため、また欠品ペナルティを防ぐため、多目に製造しないと・・という観念がある。食品業界の中には販売側が優位な地位に立つという図式が存在しているのではないだろうか。

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