廃棄カツ事件の責任の所在はダイコーとみのりフーズだけではない(毎日新聞 2016年7月19日付記事リンク)

食品流通に詳しい専門家、小林富雄先生の取材記事が毎日新聞2016年7月19日付に掲載されています。

http://mainichi.jp/articles/20160720/k00/00m/040/175000c

廃棄カツの問題は、ダイコーとみのりフーズの2社が「悪者」扱いされる報道が散見されました。

一般の方の認識もそうではないでしょうか。

ただし、あの事件は、360度全方向、われわれ皆に責任があると考えています。

プラスティック入りのカツをそのまま廃棄物処理業者に託した食品メーカーの責任。

過去何年間も、何度も監査に入りながら、ダイコーの不備を見抜けなかった行政。

一枚のカツの値段で五枚も買える、その不自然さを疑わないで買い続けていた消費者。

廃棄カツの事件を機に出版された書籍もあるくらい、大きな事件でした。

専門家の先生方は、皆、責任の所在が2社(ダイコーとみのりフーズ)だけではないことを認識しています。

誰もが自らの責任を問うべきと考え、こうして社会に発信し続けていらっしゃいます。

毎日新聞の記事を引用します。

以下
———————-
毎日新聞 2016年7月19日 22時37分(最終更新 7月19日 22時43分)

廃棄カツ横流し  食品の流通に詳しい専門家に聞く

小林准教授「食品ロス削減で再発防止を」
 「カレーハウスCoCo壱番屋」を展開する壱番屋(愛知県一宮市)の廃棄カツ横流し事件。この廃棄食品横流し事件の背景や再発防止策について、食品の流通に詳しい愛知工業大経営学部の小林富雄准教授(43)に話を聞いた。【林奈緒美】

 −−食の安全を脅かす事件が起きました。

 ◆背景には食べられるのに捨てられる「食品ロス」の問題がある。食品メーカーや小売り業界は消費者を神格化し、その反発を過度に恐れている。だから賞味期限前の食品も廃棄され、それが横流しされる事件が起きたのではないか。

 −−食品や小売り大手は廃棄食品を生ゴミと混ぜたり、廃棄現場に社員を立ち会わせたりするなどの再発防止策を講じています。

 ◆コストがかかりすぎるため、中小企業がこのような対策を強いられれば生き残れなくなる。「廃棄ありき」の再発防止策ばかり論じられている印象だ。

 −−どんな対策が必要ですか。

 ◆食品ロス自体を減らすことが重要だ。例えば生産や販売の量(ロット)をより細分化して管理すれば、異物混入などが起きた場合でも廃棄量を減らすことができる。スーパーの中には果物の棚に「天候不順で、酸っぱいです」などの説明をつけて割引販売する店もある。情報開示を徹底すれば、訳あり商品や、賞味期限ギリギリの商品でもニーズが生まれるはず。企業はもっと消費者とのコミュニケーションを大切にすべきだ。

 −−行政の課題は。

 ◆膨大な取引量を行政が監視するにも限界がある。これまで日本では廃棄食品を飼料や堆肥(たいひ)にする「リサイクル」に重きが置かれてきた。今後は食品ロス削減も含め、無駄を減らす「リデュース」の取り組みを強化すべきだ。消費者も食品に対する意識改革が求められるだろう。
—————-
以上

スポンサードリンク



職住接近と短時間労働のメリット

この記事にある動画「これから求められる働き方」、日本人の働き方に関するデータがアイコンでわかりやすくまとめられています。

60秒なので、すぐ見終わることができます。

http://www.lifehacker.jp/2016/07/160713recruit_remotework.html

>「労働時間」と「業績」には相関性は無い。

>「労働時間」が長いほど「仕事の満足度」が減少する。

>「労働時間」が長いほど「転職」意向が高まる。

減らした労働時間でほかの多様な経験が積めるというのが、労働時間や通勤時間を減らすことの、何よりの利点だと思います。

私も仕事の時間を調整し、働きながら通った大学と大学院の8年間が、逆に、仕事に大きな実りをもたらしました。

この充実感と満足感が忘れられず、楽しくて、今もまた大学院に通っています。

われわれ、生きれば生きるほど「死」に近づいていきます。

今日一日終わり、また一歩、「死」に近づいています。

限られた貴重な時間。

疲弊した表情で過ごす人が少しでも減ってほしいと願います。

スポンサードリンク



これからの時代に必要なリーダーシップ「弱者のコンテクストを理解する能力」

「はい、再検査ですね」
母と二人で行った、東京都内の健診センター。
母のことを心配して、一緒の日時に予約した。
いざ結果が出たら、
母は何ともなかったのに、私だけが再検査になってしまった。
便潜血検査で、2回のうち1回で陽性になったとのこと。
母も心配して「検査費用が高いのなら、ほら、これあげるから。」と、お札を渡してくれた。

その場で医師からの詳しい説明もなかったので、帰宅してからインターネットで調べてみた。
「便潜血検査」で大腸がんがわかるのがたった3%とのこと。
再検査で受ける「大腸内視鏡検査」は、前日に検査食を食べ、当日には下剤を飲み、腸の中を空っぽにしてから検査を受けること。
なんだか大変なことになってきた・・・

仕事の予定が入っていたため、すぐに予約ができず、2週間後の日程で「大腸内視鏡検査」を予約した。

2日前。食べるものは限られる。
1日前。すべて検査食。江崎グリコの製品だった。グリコさん、こんなところにも進出してるんだ。
当日。白い粉の下剤を2リットルの水に溶かす。
ただひたすら、飲む。
医院では、ベッドに横になり、痛み止めのため、太い針の注射を打つ。

長い時間の検査が終わり、結果を待つ。
腸全体のうち、4カ所の写真を見せられた。
真っ赤で綺麗な色をしている。
医師いわく「奥のほう2カ所は綺麗なんですが、出口近くのところに白や赤の斑点があります。これが何なのか、細胞を採取しました。2週間後にまた来てください」

またか・・・

2週間後。
「調べた結果、このポツポツは陰性のようですね。」
「心配ありません」

あっけなかった。
拍子抜けした。

便潜血検査で陽性になると、こんなに心身の負担を受けないといけないのだろうか。

埼玉県深谷市の深谷肛門科のサイトには、便潜血検査のことを「空振りだらけの検査」と書いてあった。ここのページには、便潜血検査が完璧ではないことや、大腸内視鏡検査について、詳しく書いてある。

こんなにわかっているのなら、
健診センターでこの内容の概要を説明してほしかった。
http://www.fukayakoumonka.or.jp/gan20.html

便潜血検査で陽性になった人のうち、3%は大腸がんが発見されるが、残りの97%はそうではない。

便潜血検査で再検査を指示された人のうち、大腸内視鏡検査を受ける人は6割程度だという。

その人たち全員が、このような心身と金銭の負担を受けているのだろうか。

「便潜血検査には功罪ある」としているサイトもあった。
http://daichou.com/ben.htm

再検査の結果が出る前、
もしかして、がんかもしれない、と思ったが、案外、冷静だった。
40代で父が亡くなっているので、自分も40代までに死ぬかもと達観しているところがある。

自分のまわりにいる、がんを克服した人、がんと闘っている人、がんと共存している人を思い浮かべた。

がん、イコール不幸 ではない、と思った。

ある女優さんのインタビュー記事で「がんは不幸なのか」という趣旨のものがあった。
「がんは不幸、がんでなければ幸福」などという二元論が成り立つわけがない。
一病息災という言葉もある。

がんは疾病。
でも、
がんだからイコール不幸、であるはずがない。

弱い立場に立った経験があると、その弱い立場を察することができる。

たとえば入院生活や受験の失敗、家族を喪う、など・・・

でもたとえ弱い立場になったことがなくとも、想像力があれば、その弱い立場の人の気持ちを察することはできる。

弱い立場に立っても、それを忘れてしまう人もいる。

平田オリザさんの講義を4月に受講した。
ご著書「わかりあえないことから」に書いてあることを、オリザさん自身の口からしゃべるのを聴くことができた。

以下、平田オリザさんの著書から引用する。
私も平田オリザさんのリーダー論に共感している。
————————–
弱者のコンテクストを理解する

東日本大震災以後、リーダーの資格ということが多く問われてきた。
大学でもリーダーシップ教育が、声高に叫ばれている。

 通常、そういった場面で言われるリーダーシップとは、人を説得できる、人びとを力強く引っ張っていく能力を指す。しかし、私は、これからの時代に必要なもう一つのリーダーシップは、こういった弱者のコンテクストを理解する能力だろうと考えている。

 社会的弱者は、何あらかの理由で、理路整然と気持ちを伝えることができないケースが多い。いや、理路整然と伝えられる立場にあるなら、その人はたいていの場合、もはや社会的弱者ではない。

 社会的弱者と言語的弱者は、ほぼ等しい。私は、自分が担当する学生達には、論理的に喋る能力を身につけるよりも、論理的に喋れない立場の人びとの気持ちをくみ取れる人間になってもらいたいと願っている。

スポンサードリンク



「リサイクル」より「リデュース(廃棄物の発生抑制)」のほうが優先順位は高い

本日2016年7月8日付の日経MJを見ていたところ、日経BP社がおこなった「環境ブランド調査2016」の結果が記事として取りあげられていました。11面の「ニュースなデータ」です。

見出しとして

「トヨタ、首位奪還」

「2位はサントリー」

「『リサイクルに力』はファストリ1位」

とありました。

あれ?

「リサイクル」は、環境の原則「3R=Reduce、Reuse、Recycle」からみて優先順位3番目です。なぜなら、せっかく人件費やエネルギーを費やして作ったものを、またリサイクルにするとなると、二重にコストやエネルギーが費やされるためです。

なぜ?

「リデュース」は質問しなかったの?

と思って、もとのデータを見に行きました。

日経BP社のところには見当たらなかったのですが、一般社団法人エコマートさんが、エコ関連のプレスリリースとしてとりあげてくださっていました。

これを見ると、「リサイクルに力を入れている」のほかにも「廃棄物削減に力を入れている」企業 という質問項目が存在していました。

https://www.ecomart.or.jp/press/detail.asp?id=239575

もうすこしいえば、「廃棄物削減に力を入れている」より「廃棄物の発生抑制(=Reduce)に力を入れている」としてほしかった。

そして、この調査結果をとりあげる日経MJさんは「リサイクル」より「リデュース」を優先して見出しにあげてほしかった。

もし私がこの記事を担当したならそうします。

日本の話だけではなく、世界的にも、Recycle(リサイクル)より Reduce(リデュース)を最優先するのは共通だからです。

京都市は、2回取材にいきました(今年2月と5月)が、3Rのうちの「リサイクル」を抜かした「2R(に あーる)」を提唱しています。もうすでにリサイクルはしっかりやってきているから、そして、リサイクルにはコストとエネルギーがかかるから、だそうです。

※ 2R(に・あーる)…ごみになるものを作らない・買わない「リデュース」と,繰り返し使う「リユース」

http://www.city.kyoto.lg.jp/kankyo/page/0000192502.html

東京都文京区も、5月に講演にうかがった際、「2R」とおっしゃっていました。

http://www.city.bunkyo.lg.jp/tetsuzuki/recycling/event/ekokarejjibosyuu.html

日経MJの愛読者ではありますが、今回の見出しと、もとデータのとりあげ方をみると、報道のされ方に頼ってはいけない、と強く感じた次第です。

専門分野ではない分野の記事を書かなければならない、日々勉強しているメディアの方には敬意をはらっています。

もし自分なら、次々飛び込んでくる専門外のこと、毎日記事にするなんて、とてもできない。

ただ、やはり、専門分野のことを深く(メディアが)報じることには限界があると思います。

MJの記事も、「リサイクル」より「リデュース」が優先順位上、とわかっていたら、こういう見出しにはならなかった。

「事実」と「報道」は、イコールではない。

「報道」は、報じる人のフィルターがかかっている。

だから「報道」をそのままうのみにしない。

メディアリテラシーを持つこと。

「あれ?」と思ったら、自分で調べてみること。

スポンサードリンク