先日、啓林堂書店奈良店でトークショー&サイン会させて頂いたところは、なんと、映画の河瀬直美監督(奈良出身)と作家のドリアン助川さんのお二人が先月トークショー&サイン会なさったのと同じ場所でした。有名人は ”有名税” を負担する我慢に耐えないとならないので大変だなあ・・と思いますが、このときばかりは、ああ、集客に困らない有名人なら書店の方にも苦労かけないのに・・・と思ってしまいました。
河瀬直美監督の映画「もがりの森」で、演技の素人ながら主演なさった、奈良在住のうだしげきさん。彼が店主を務める古書喫茶「ちちろ」に、先週奈良出張の際に行ってきました。2006〜2007年ごろ、この店によく通っていました。
うださんが70歳の老人を演じたのは今から10年前。「あのとき演じたのと同じ年になっちゃいました」と、うださん。あの頃は無名だった尾野真千子さん(奈良出身)も、いまや全国区の女優さんになられました。
「あん」で最も印象深かったのは、吉井徳江さんが最期に千太郎にあてた手紙で「生きる意味」について語るところ(以下、引用)。
『私たちはこの世を観るために、聞くために生まれてきた。この世はただそれだけを望んでいた。だとすれば、教師になれずとも、勤め人になれずとも、この世に生まれてきた意味はある。』
『世の中には、生まれてたった二年ぐらいでその生命を終えてしまう子供もいます。そうするとみんな哀しみのなかで、その子が生まれた意味はなんだったのだろうと考えます。』
『今の私にはわかります。それはきっと、その子なりの感じ方で空や風や言葉をとらえるためです。その子が感じた世界は、そこに生まれる。だから、その子にもちゃんと生まれてきた意味があったのです。』
『だから私、お菓子を作ってきたのね。甘い物をこしらえて、涙を溜め込んだ人に食べてもらってきたのです。そしてそれで、私も生きられたのです。』
『店長さん。あなたももちろん、生きる意味がある人です。』
『きっといつか、これが自分の人生だと言える日がくると思うのです。』
『物書きにならずとも、どら焼き職人にならずとも、あなたはあなたらしく立ち上がる日がくると思うのです。』
Book of Dorian Sukegawa “AN”