2015年3月、2つめの大学院を終えた頃、講演の依頼を引き受ける数を減らそう、って思いました。
主な理由は3つ。
1、講演に来てくれるのは、意識の高い人。その層だけにアプローチしていても、食品ロス問題は変わらない。
2、自分の持続性が担保できない。依頼を請け過ぎて、声が出なくなったこともある。そうすると、お金をいただいた分だけのきちんとした仕事ができない。
3、もともと話すのが苦手。生きている間に、より広く多くの人になんて伝えきれない。
講演以外の伝える手段として「本」を考えました。
そこで2015年7月から、出版講座に通いました。
半年間の講座を経て、企画を出版社に取り上げていただき、2016年に食品ロスの本『賞味期限のウソ 食品ロスはなぜ生まれるのか』(幻冬舎新書)を出版しました。
編集を担当してくださった編集長さんが、Yahoo!ニュース個人のオーサーに推薦してくださいました。
2017年2月、Yahoo!編集部の審査に合格し、2017年3月から食品ロスの記事を書き始めました。
こうして、まわりの方々のおかげもあって、自分自身があちこち動かなくても伝えることができる、講演以外の手段を、少ーしずつ、増やしてきました。
特にインターネットの記事のおかげで、講演に来ないような層にも少しだけアプローチできるようになりました。
おかげさまで、『賞味期限のウソ』は4刷となりました。
Yahoo!ニュース個人のオーサーとして、2018年にアワードを受賞しました。
「広く多くの人に伝える」ことを、以前に比べたら、少しだけ実現することができてきました。
講演のご依頼を引き受ける数を減らしても、ありがたいことに、リクエストはずっと続いていただいてきています。
だからと言って、それに甘んじて、同じことを同じように繰り返し話すのでは、自分の進歩はありません。
下記の3つを、自分に課すチャレンジとして続けてきました。
1、国の主催のシンポジウムやイベントで講演する。国が動くと企業が動く。企業が動くと、食品ロスを生み出す商慣習が、少しずつ、よい方向に変わる。
2019年10月には、環境省主催、外務省主催など、国のシンポジウムで基調講演や登壇する機会を得ることができました。
2、日本国籍以外の人に、英語でプレゼンする。2015年、2つめの大学院で修士論文を出し終えたあと、東京都庁で、インドやタイから来日していた行政職員にプレゼン。2016年、国際学会でプレゼン。2019年10月はG-20でプレゼンしました。
3、海外に出向いての講演、講義をする。
3に関しては、農林水産省の日・ASEAN食人材育成事業で、2017年から、毎年3カ国ぐらいずつ渡航し、東南アジアの大学生や大学院生、教員などに、農産物をロスにしないための商品開発ワークショップやプレゼンテーション、チームごとに競わせる、などを続けています。
2019年は、5月にインドネシアのボゴール農科大学、6月にベトナムのベトナム王立農業大学、10月にフィリピンのセブ、ビサヤス大学へ講義し、ワークショップを行いました。
講演を減らす中でも、この9月10月には、嬉しいことがありました。
所属していた組織を離れても、そこで一緒だった方が聴きに来てくださったことです。
青年海外協力隊の同期。
日本ケロッグ勤務時代の同僚。
葵会(食品企業の勉強会)でご一緒していた別の食品メーカーの方。
すでに仕事上では関係がなくなった、にもかかわらず、足を運んでくださったこと、とても嬉しく思いました。
また、初めてお会いする方とのやりとりでも、嬉しいことがありました。
中学生や高校生、大学生など、若い世代が熱心に聴いてくださること。
私の父親・母親世代など、熟年世代が足を運んでくださること。
講演の数を減らすことで、少し背伸びかなと思うチャレンジも、少しずつ続けることができました。
余裕も生まれました。
食品ロスの世界では、「作り過ぎ」「売り過ぎ」「買い過ぎ」が、ロスを生み出しています。大量生産大量廃棄の時代では、もう、ない。
自分がそのようなことを発信していくからには、自らが、「適量」の仕事をし、仕事の姿でそれを見せていきたいと思います。
(徳島県にて)
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