5歳のときの誘拐事件

5歳のとき、男に誘拐された。
今思えば、あれは性犯罪未遂だった。
当時暮らしていた世田谷区の社宅。
団地のような棟が建て並ぶ、
棟と棟との間で遊んでいた。
そこへ、男がやってきた。
言われるまま、別の棟に連れていかれた。
コンクリートの建物。
ドアとドアが向かい合う場所。
男は着衣を脱いだ。
私に対し、指示をした。
あのままだったら、どうなっていただろう。
幸い、女性がドアを開けて出てきたので
男は、何事もなかったようにふるまい
私はそのまま帰宅した。
母には言わなかった。
恐ろしい ”獣(けだもの)”のことを
母には言えなかった。
子どもは、言うべきことを親に言えないことがある。
事情があり、親と離れて暮らす子もいる。
やましさがあり、言えないこともある。
恥ずかしさから口を閉ざすこともある。
親に心配かけまい、と、黙ったまま
元気をよそおうこともある。
岩手の事件の男の子や、川崎市の事件の子も
おそらくそうだったのではないかと思うと
こころの奥が痛くなる。
大人が子どもと違うのは
判断力を備えていることだ。
語彙を会得し、伝える力もある。
弱い立場の子どもを守るためにも
言うべきことを言うのが大人。
誰かにおもねって
言うべきことを言わないのは
真の大人ではない。
(写真は小学生時代の私と弟、現在のさいたま市浦和区にて)
Photo: Me and younger brother when we were kids

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