フィリピン・レイテ島での台風被災地支援

広報をつとめているセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)の理事長チャールズ・マクジルトンとともに、12月17日から20日までフィリピンへ渡航した。

被災地の一つであるレイテ島のJavier(ハビエ)で現地の支援スタッフにインタビューした内容と、現地を見て実際に感じたことをまとめてみたい。

<Javierの支援スタッフへのインタビュー>

Qこれまでにも多くの支援物資が届いているが、今後も支援物資は必要か?もし必要とすればそれは具体的にどのようなものか?
A まずコメ(フィリピンローカルで食べられているコメ。インディカ米)
そして缶詰。コーンビーフや鮭の缶詰など。あとはインスタントヌードル。
現地の人にとって使い方のわかりづらい食品などは、きちんと教えてから渡さないと、無駄になり捨てられてしまう可能性が高いので、きちんと使用方法を伝達できるタイミングで渡すことにしている。あとは食器類など。スプーンやフォーク、お皿や鍋など。特にお皿やグラスは割れないもののほうが使い勝手が良い。

Qココナッツの木(ココヤシ)の多くがダメージを受けており、今後、復活させるまでにかなり時間かかると思うが、農産業の面ではどうか
A RAMBOという種のメーカーから農作物の種の寄付があった。かぼちゃ・オクラ・苦瓜・シータウ(豆)・茄子・たまねぎ・トマトなど。ここJavier(ハビエ)には28のバランガイ(村)があり、28000人の人口がある。バランガイごとに代表者に対して、この寄付された農作物の種を配布した。このような支援が進みつつある。

Q 住居に関して、Javierで100%崩壊した住宅の住民に対しては、JavierのMayer(市長)が、temporary house(仮設住宅)のための住居の材料を寄付している。材料は寄付するので、建てるのは自分たちでやるように、という指示。支援者と被災者が50%・50%ずつ負担する、という形。そして二段階目としては、長屋のような形のPermanent Houseを提供する、という形。

 

ここからはインタビューではなく
<井出留美のレポート>

衣食住
<建築・住居の観点から>2011年3月11日に発生した東日本大震災の時は、震災の翌月、支援物資を運ぶために石巻に入った。今回も、11月上旬の台風発生の1ヶ月後に被災地に入ったことになり、時期としては同じくらい。フィリピンでは、住居の崩壊が尋常ではない。建築の専門の方が見ればよくわかると思うが、おそらくは、建築する際に充分な震災対策をしていないせいか、住居自体がもろく、そのため破壊の程度がより大きくなっているように感じ。吹き飛んだ屋根や壊れた窓をシートで覆っている家も多く、シートは被災地で役立っていた。また複数の団体から支援されたテントもあちこちに見られた。→必要とされる支援および支援物資=テント・(ブルー)シート・建築の技術的サポート?

<栄養の面から>2013年8月、マニラで洪水が発生したときにも、フィリピン警察とともに支援物資の詰合せ作業をおこなった。一家庭につき、コメキロ、コーンビーフの缶詰3−4缶、魚の缶詰6缶、インスタントヌードル4袋、インスタントコーヒー6袋、といった具合だった。フィリピンのニーズを考えると、求められる支援物資は
コメ
缶詰(コーンビーフや鮭など)
インスタントヌードル
といったものが三大支援食品物資といえると思う。
東日本大震災の折にも、震災直後からしばらくの支援物資は炭水化物中心で、震災1ヶ月後に宮城県の避難所で栄養不足が発生していた。ビタミン・ミネラルが不足したためである。自然災害発生時には、サプリメントのように、栄養素をバランスよく効率的に摂取することができるものが役立つ。今後、サプリメントの支援の可能性もあるかもしれない。→考えられる支援および支援物資=サプリメント

<飲料の面から>フィリピンは暑い気候のため、またアメリカからの食文化のため、炭酸飲料を好んで飲む習慣がある。コーラが多く消費されているが、暑い国なのでビタミンCを多く消費する傾向にあり、ビタミンCなどのビタミンを含んだ炭酸飲料なども助けになると思う。また、どんなときでも水は必要。現地では、誰もが「水ある?」「水持ってる?あるよ」と、こちらが飲料水を確保できているか否かを気にするのが印象的だった。フィリピン国内でもミネラルウォーターは比較的安価で手に入りやすいので、優先順位としてはさほど高くないのかもしれない。→考えられる支援および支援物資=ビタミンCなどの栄養素を含んだ炭酸飲料および栄養ドリンク

<子どもの支援>台風発生後1ヶ月以上経ってなお、道を走る車に対して、小さな子どもたちが食品などを求めて手を差し出す姿が見られた。子どもは大人と違って消化器官も未成熟で、一度に多くの食品を食べられない。そこで消化吸収が速く、少量でエネルギーになりやすい砂糖を含んだ適量のお菓子が役に立つ。→考えられる支援および支援物資=できれば栄養価を備えたお菓子類

生活習慣

<トイレの面から>いくつかのトイレは衛生的に保たれていたが、あるトイレでは紙もなく、水洗でありながら、水を流す部分も壊れており、ひしゃくに水をすくって流す方式になっていた。自然災害発生時は特にトイレが混雑し、排泄物がまき散らされたりする。東日本大震災発生時にも、排泄物がスーパーの袋などにされたものが散らばっていたりした。→考えられる支援および支援物資=簡易トイレおよび緊急時に作成できる簡易トイレの作り方の技術伝達

<運動の面から>フィリピンではバスケットボールが普及しており、草野球のような感覚で、通りすがりの道端にバスケットボールのゴールや小さなコーナーがある。→考えられる支援および支援物資=バスケットゴール・バスケットボール

<睡眠の面から>テントの中で暮らしている人のテントの中までは見なかったが、寝具も無くしてしまった人にとっては、マットレスとタオルケットがあるだけでも、質の良い睡眠がとれると思う。もしそれが難しいなら、質の良い寝袋など。→考えられる支援および支援物資=マットレス・タオルケット・寝袋

<停電に備えて>かつてに比べて停電はかなり減ったが、自然災害時にはジェネレーターが役にたつ。→考えられる支援および支援物資=ジェネレーター

日常生活

<衛生面から>歯磨きや石鹸などの衛生用品が、ある団体からの支援により配られていた。一つの村(コミュニティ)の名簿を活用し、一人一つ(あるいは一世帯一つ)という制限を決めて、地域の体育館で配布されていた。東日本大震災の折も、発生直後から、被災地では衛生用品が必要となっており、フィリピンでも台風発生から1ヶ月強が経ったばかりなので、まだ必要と見られる。また、ところどころで泥かきや、遺体を埋める穴掘り作業、ゴミを燃やすなどにより煙が発生しているので、マスクも必要かもしれない。ただし日本人ほどマスクをする習慣は現地にはなく、女性などはハンカチで口と鼻をおおったり、男性などは三角巾のようにした布で口をしばったりしている。→必要とされる支援および支援物資=衛生用品全般およびマスクもしくはスカーフのような布
<洗濯に関して>フィリピンでは、洗濯物は手洗いして、屋外にひもを張ってそこに鶴下げる習慣がある。→考えられる支援および支援物資=洗濯ひも・洗濯石けん(固形および粉)
<日よけの面>フィリピンでは日差しが強いため、雨傘を日傘のようにして使っている。渡航した折にも、亡くなった方を弔うため、日中に関係者が行列して道を歩いており、多くの方が日傘(雨傘)をさしていた。日本で余っている傘などは、現地で使えるかもしれない。→考えられる支援および支援物資=傘
<情報収集の面から>作業をしながら情報を収集できるラジオ、簡易ラジオがあると便利かもしれない。レイテ島の中でも、復旧作業をする、支援物資の詰める作業をするなど、目と手と足は動かしているものの、耳が空いている状態を見たので、ラジオがあると自然災害発生時も便利かと思う。→考えられる支援および支援物資=電気が切れたときでも聴くことのできる簡易ラジオ

 

<車輛に関して>何年も前から変わらない習慣として、日本車の中古車がフィリピン国内を多く走っている。首都マニラからレイテ島のタクロバンへと飛ぶ国内線で使われるバスは、日本語が表示された日本のバスの中古車が使われていた。レイテ島の町中には、「ゆうパック」と書かれた郵便局の大型トラックが使われていた。また運送会社のトラックもあった。→考えられる支援および支援物資=中古車輛の寄贈

<農産業の面から>フィリピンの基を為しているココヤシの木がダメージを受けているのが強く伝わってきた。晴れた青空のもと、高くそびえたったココヤシの木が海辺にたくさん並んでいるのだが、その多くがうなだれたような、しなだれたような感じであった。すべてがなぎ倒されたものに関しては、育成するまでに一年以上がかかるので、ココヤシの木で生計を立てた人のダメージが大きいと考えられる。ある地域のある田んぼには碧々と茂った稲が並んでいた。

→必要とされる支援および支援物資=ココヤシの木の復活のための農業技術
精神面
<国旗>被災地の中には、たくさんのところで国旗が掲揚されていた。きちんとしたものではなく、棒切れのようなものにささったものや、ひもにぶら下げたものなどもあった。国家として踏ん張りどころという気持ちと、国を誇りに思う気持ちが伝わってきた。国旗を掲げることにより、勇気と元気を出そうとしているのだと思う。→考えられる支援および支援物資=フィリピン国旗の布

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