新著『誰でもできるフードバンクの作り方 未来にツケを残さない フードバンクの新しい挑戦』(高文研)

あいあいねっと(フードバンク広島)の原田 佳子 (Yoshiko Harada)さん・増井祥子さんと、フードバンク岡山の糸山 智栄 (Chie Itoyama)さん・石坂 薫 (Kaoru Ishizaka)さんの共著『誰でもできるフードバンクの作り方 未来にツケを残さない フードバンクの新しい挑戦』を贈って頂きました。大原悦子さんのご著書『フードバンクという挑戦』以来のフードバンク新刊ですね!The book of Yoshiko Harada, Shoko Masui, Chie Itoyama and Kaoru Ishizaka

「フードバンク」とは、まだ食べられるのに何らかの理由で捨てられてしまう食品を企業などから受け取り、必要とする人々に配分する活動、もしくはその活動をする組織を指します。

私は米国に本社があるグローバル企業に勤めていたので、2008年、米国本社から「日本にもフードバンクがあるよ」と連絡を受け、その年の春から、日本初のフードバンクであるセカンドハーベスト・ジャパン(2HJ)に自社商品の寄贈を始め、2HJ主催のFAB (Food Advisory Board)定例会にも出席するようになりました。協力企業としてメディア取材もずいぶん受けました。

2011年の震災では、2HJのトラックに私と自社商品23万食を載せてもらい、宮城県石巻市を中心に、被災地での食料支援を行ないました。そのことが、2011年9月の退職・独立につながりました。2HJの代表チャールズさんや、すでによく知っていたスタッフの皆さんから「井出さん、会社やめたんならうちの広報をやってもらえませんか」と声をかけていただいて、2014年までの約3年間、2HJの広報を担当することになりました。

2HJ広報時代から、同じフードバンクである原田さん、糸山さん、石坂さんと交流していたので、今回の本は、これまでの歩みを一緒になぞるような気持ちで読ませていただきました。

糸山さんは、行動力のかたまりのような方。写真に映っている「おからしゅういちくん」(おからを週一回食べましょう)の普及活動や、朝食をとろうのFacebookページいい日 私の朝ごはん立ち上げなど、気づいたら、あっという間に始めていらっしゃいます。埼玉県川口市の「食品ロス削減検討チーム川口」の定例会にも、はるばる岡山県から、もう5回以上、来て下さったでしょうか。こちらも勝手に「川口メンバー」だと思っています。私の本も、何度も広めてくださり、感謝感激です。

石坂さんの調査結果は、先日、東京工業大学で開催された廃棄物資源循環学会で聴講し、東京のフードバンクと岡山との違いを興味深く拝聴しました。地域による多様性がフードバンクの持ち味だと感じます。廃棄物工学研究所の主任研究員という立場から、CO2の発生抑制という観点でのフードバンクの貢献性について語れる方は、石坂さんをおいて他にいらっしゃらないのではないでしょうか。

増井さんは、島根県安来市でのフードバンク推進委員長を務めているときに、一度だけお会いしました。現在も医療機関で管理栄養士を務めていらっしゃるとのこと、このような方がフードバンクに携わっていらっしゃるのは心強いことです。

原田さんは、ご自身の活動を冷静に俯瞰し、客観視されている点と、管理栄養士とアカデミックな立場からのアプローチが素晴らしいと感じています。原田さんのおっしゃる「フードバンクが、課題解決ではなく、課題の再生産になってしまってはいけない」という言葉が強く印象に残ります。フードバンク発祥の国である米国との違いに言及されていることや、「良いことをやっているのだから皆が支援してくれるのは当たり前、というのは誤解」というのもその通りだと共感します。自分の活動に埋没せず、自己正当化しないで、どれだけ自分や自分の組織を客観視できるか、他者目線や社会の視点が持てるかどうかが、どんな仕事においても成功のカギだと感じます。

私が現場にいたときジレンマだったのは、真に食料を必要とする人にアプローチできづらいということでした。食品ロスがたくさん企業から寄贈されることや、フードバンクが発展し、組織が大きくなっていくことは、喜ぶべきなのだろうか?ということについても考えました。 2HJの初期のスタッフと「NPO活動って”楽しい” からついつい続けてハマってしまう」「でも、本来、NPOは、課題解決したら無くしていいもの」と語ったことを覚えています。

食品ロスという社会的課題とフードバンクについて真摯に考えている方に読んで頂きたい一冊です。