理事を務めている日本広報学会が主催した、第二十回 日本広報学会研究発表全国大会に参加しました。
感想を10項目にまとめました。
【大会プログラム・運営に関して】
1、地方開催ならではの基調講演が良かった。残念ながら九州旅客鉄道株式会社相談役の講演は聴講できなかったが、熊本県知事の「くまモンの政治経済学〜くまモンのロイヤリティフリー戦略〜」は得るところがあった。また、基調講演2つとパネルディスカッションを一般公開にしたのも良かったと思う。自分自身が講義した神戸大学や津田塾大学でも、学生のみならず、一般公開にして地域の方が聴講できる取り組みを続けており、有意義だと思う。
2、会場の移動手段である屋外の螺旋階段も便利だった。毎回、会場内の移動が面倒だが、よい施設だった。
3、予稿集の部数が余っていたようだった。毎回思うが、印刷代と用紙代がもったいないと思う。IABCの米国開催のように、ダウンロード形式とし、紙を使わない方向にしてはどうか。先月(9月)広島工業大学で開催された廃棄物資源循環学会では、参加者自身がダウンロードし、印刷物は配布しないという方針だった。
4、ポスターセッションの会場選定は難しかったと思うし、あの場所しかなかったとは思うが、積極的に参加者に見て頂くためには、もう少し人通りのある場所でも良かったかもしれない。(発表会場の近くや螺旋階段??)
【内容について】
5、今回のテーマ「グローカル時代のコーポレート・コミュニケーション戦略を深化する」に関して、パネルディスカッションでパネルとして登壇された、上野往洋氏(事業構想大学院大学副学長・日本広報学会副会長)の、次の言葉が印象深かった。「徹底した価値を磨き続けること」(「日本は海外に対してきちんとその魅力を広報できているのか?」という趣旨の質問に対して)
6、A-1 雨宮和弘さんの「グローカル時代のコーポレート・ビジュアル・コミュニケーション 企業の社会認知を促進する伝達媒体としてのビジュアルの価値」は密度の濃い内容で、時間が足りないくらいだった。発信すべき内容が相手にできる限り伝わるように(「伝える」ではなく「伝わる」ように)どう魅せるか、ということについて、具体的な事例やビジュアルを見せながら語ることのできる人材は、雨宮さんだけだと思う。
7、B-10 秋山和久さんの「時限型広報マネジャーに求められる能力要件の試案」は、切り口と視点が興味深かった。「広報パーソンとは」ということがよく語られるが、実際問題、大手企業では特に異動によるジェネラリスト育成が主となっており、広報職に長年従事することのできる人材は限られている。そのような現状が、はたして既存の広報人材育成にそぐうのか、という問いかけは貴重である。
8、B-7「組織におけるコーポレート・コミュニケーション機能の必要性 〜広報人材と大学スポーツサークル人材の類似性を視点に〜」は、体育会に所属した人間として興味深く聴いた。広報の実務に20年近く従事してきて、広報パーソンは、縦方向(上司や部下)と横方向(外部組織)、斜めなど、全方位的に折衝や議論などのコミュニケーションが必要な職種だと感じている。したがって、自分の仮説は「縦方向と横方向のコミュニケーション能力が問われる」だが、講演者が主張する「体育会で養われる縦方向と違い、スポーツサークルで養われる横方向のコミュニケーションが広報人材の素養に寄与する」と「横方向」を主張する根拠がどこにあるのか、聴いてみたかった。
9、アカデミック側の方に対して、広報実務にまったく携わっていない方が広報人材うんぬんを語るのに、少々、無理があるのを感じた。
10、逆に実務サイドの方に対して、学会の場にそぐわない語り方やパワーポイントがあるのを感じた。過剰に堅苦しく形式にこだわる必要はないが、トークショーのごとく語り過ぎるのも学会の場には適していないのではと感じた。