退職届を出したという、NHKの堀潤アナウンサーが、2011年12月12日、ツイッターでこうつぶやいたという。
「国や組織に期待してはだめだ。もうだめだ。僕らで動こう。僕らで考えよう。僕らでこの国を変えよう。だって、僕らの国なんだからさ」
東日本大震災の翌週、私が海外からの支援物資について首相官邸に電話したところ、たらい回しにあったことは、共著やコラムで公表している。
そのさらに翌週、再度、首相官邸に電話したところ「もう食べ物は足りてます」と男性が答えた。震災から10日後のことである。
海外から送ろうとしていた支援物資に対し、「被災者の人は、国産がいいと言ってます」とも答えた。
現場では、食べ物はまったく足りていなかった。「足りている」という答えを聞いて、「この国はもうだめだ」と思った。
というと語弊があるかもしれない。
現場を見ずに、憶測でものを言う人が国のトップにいるようでは、この国のトップには期待できないと感じた。
確かに、その男性の知っている場所には、食べ物(支援物資)がたくさんあったのだろう。
ただ、あのとき必要だったのは、「必要な人のところに食べ物が届く」ということだった。食べ物は、命に関わるものなのに、被災地ではひとつのおにぎりを4人で分け合っている状況なのに、涼しい声で「足りてます」と答えた、あの声。
具体的な声は覚えていなくとも、まったく温度を感じさせないその声の調子と空気感が記憶にはっきりと残っている。
東日本大震災のとき、そしてその後、私は堀潤氏と同じようなことを感じた。
そして震災の半年後に退職し、転身した。
先日、ある大学のトップの方と話していたら「国のプロジェクトはみんなだめになってるじゃない。(いま民間でやっていることを)国にまかせたら、やる気のある人は皆去っていく」とおっしゃっていた。妙に、すとんと腑に落ちた。