『生涯未婚時代』永田夏来著(イースト新書)

“昭和”の価値観は、今だに色濃く残っている。つい先日も「男性育児参加が当然」の風潮に怒り「昔は女性が一人で子どもを6、7人育て、畑仕事もしていた」と主張した、90代の女性脚本家の発言が報道された。毎回、右肩上がりの棒グラフを載せて「毎年増収増益」の企業特集を載せる全国紙、年収ランキングを頻繁に特集し、世帯人数に関わらず「高収入=是」とする経済系メディア、対前年比で必ずプラスを目指す民間企業・・・

著者は、専門分野である家族社会学の観点から、そんな過去の価値観—「結婚して家族を作るべき」「家族は良いもの」—に疑問を呈し、パンチを喰らわす。

著者の強い叫びは、最終章の一文と帯に現われている。

『未婚化・晩婚化が主張されて婚活が高い関心を集めている現在、未婚者に対する社会的な牽制はますます厳しくなっていて、そのこと自体が誰かを責めることにつながっているという点は見逃してはならないのではないでしょうか』

『結婚する人生も、しない人生も、同じぐらい尊い』

「結婚すべき論」は、恋愛をしないこと、結婚しないこと、子どもを持たないことを選択している人に対しても、見えない槍を刺す。その「べき論」は、「人としてダメ」な気にさせる。著者は、実際には生き方が多様化してきているにも関わらず、「適切な年齢までに結婚して子どもを持つのが理想」とする前提は、未婚や恋愛経験がないことへの差別を強化する社会への可能性を秘めているとし、警鐘を鳴らす。

新書ならではの良さを活かしつつ、サザエさんやおそ松さん、キョンキョン、逃げ恥、ポケモンなど、とっつきやすい事例が各章に盛り込まれており、読み進めやすい。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)を規制する「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」が施行されてなお、デリカシーのない質問をしてくる人はいる。どんなライフスタイルを選ぶのも個人の自由であり、「結婚」は、いち選択肢であるから、未婚者を包摂する社会を構築していこうという著者の提言を、未婚者はじめ、従来の固定観念を持っている人に読んでもらいたい。